婚姻費用(別居期間中の生活費)とは
同居している間は意識しませんが、別居しても夫婦である以上、お互いの生活レベルが同等になるよう助け合う義務があります。そんな「婚姻費用」について知っておきましょう。
婚姻費用って?
夫婦が互いに同じレベルの生活をしていく上での生活費のことで、この費用を分担する義務が夫婦にはあります。もちろん普通に夫婦が同居しており、サラリーマンである夫が仕事で給料を得て、専業主婦である妻が家庭内を切り盛りするという場合には婚姻費用の問題を考える必要はありません。
- 夫婦の一方が家を出て別居状態である
- 同居していても収入のある方(おもに夫)が生活費を渡さない
という場合に婚姻費用の問題が出てきます。
婚姻費用の相場
なかなか婚姻費用も相場というものは見付かりませんが、家庭裁判所の統計によれば月額4~15万円というあたりが多いようです。支払い側(おもに夫)の一般的な収入や、普通の生活水準を考えればこのくらいの金額に落ち着くのでしょうか。もちろんこれは家庭裁判所で認められたケースだけの数値ですから、実際には一方的に別居されたにも関わらず1円も生活費をもらっていない人(おもに妻)が大勢いることを忘れてはいけません。
金額(月) | 割合 |
---|---|
2万円以下 | 7.2% |
2~3万円 | 7.1% |
3~4万円 | 4.2% |
4~6万円 | 17.9% |
6~8万円 | 12.2% |
8~10万円 | 16.4% |
10~15万円 | 16.4% |
15~20万円 | 9.8% |
20~30万円 | 6.2% |
30万円以上 | 2.6% |
合計 | 100.0% |
婚姻期間別 財産分与の取決め額 (横軸の単位:円)
※婚姻期間ごとに割合の多いマスを黄色で表示しています
婚姻費用を相手が支払わない時は?
離婚を前にした協議や調停中に、もし夫がまったく生活費を妻に渡さなかったらいわゆる「兵糧攻め」の状態となり、妻としても話し合いどころではなくなります。そんな時は、まず家庭裁判所に「婚姻費用分担の申立」をおこないましょう。これによって裁判所は夫に対して支払いを命じることができます。ただし、この仮の措置には強制力がないのが欠点です。
調停が不成立になって審判まで進んだ場合は、さらに仮の措置よりも強力な「審判前の保全処分」が夫に対してくだされます。こちらは強制力を持ちますので、とことん夫が婚姻費用の支払いを拒んだ時でも給料の差し押さえなどができます。
いつ婚姻費用を請求すれば良いか?
婚姻費用の請求はできるだけ早くおこなった方が得です。というのも本来は「婚姻費用」という性格上、別居した時点をスタートとして現在までの婚姻費用すべてを請求できると思ってしまいそうですが、裁判所は支払いを求める側(おもに妻)からの請求がなされた時点をスタートと見なすからです。
有責配偶者からの請求はできる?
たとえば無収入の妻が勝手に家を出て別居状態になった場合、妻から夫への婚姻費用請求はできるのでしょうか? 答えは「請求できる」です。つまり有責配偶者(このケースでは妻)からの請求も認められるということです。ただし有責性と婚姻費用がまったく無関係かといえばそうでもなく、この例のようなケースですと妻の有責性に応じて婚姻費用が減額されることになります。