
離婚の時に大きな問題となるのは、いつの時代でも「お金」の話です。慰謝料と養育費は雑誌やテレビなどで有名ですが、財産分与・婚姻費用については意外と知られていません。離婚の時に損をしないよう、詳しい知識を身に付けましょう。
離婚の時に支払われるお金
離婚時、あるいは離婚後に夫婦の間を行き来するお金には、大きく分けて慰謝料・財産分与・養育費の3つがあります。
また、少し性質を異にしますが、婚姻費用も併せて4つの項目について考えることも多いです。
慰謝料や財産分与のように一括して支払われる場合は一時金、養育費のように毎月支払われる場合は定期金と呼ばれたりしますが、実態は変わりません。
また、慰謝料ということばを嫌って「和解金」と呼ばれることもあります。
慰謝料・財産分与・養育費などが混同されていることも多いようですので、それぞれの違いを下の表で整理してみました。
離婚給付金、それぞれの違い
位置付け | 有責側から請求 | 離婚後の請求 | |
慰謝料 | 精神的・肉体的苦痛に対する損害賠償 | 認められない | 3年で時効 |
---|---|---|---|
財産分与 | 夫婦の協力で得た財産の分配 | 認められる | 2年で時効 |
養育費 | 子供が成人するまでの諸費用 | 認められる | 条件による[1] |
婚姻費用 | 夫婦が生活するうえで必要なお金のこと[2] | 認められる | 2年で時効 |
※1.養育費の時効条件について
公正証書や調停等で取り決めをしてある場合 → 各月分毎に5年又は10年で時効
離婚時に何も取り決めをしていない場合 → 今後の養育費に関する取り決め自体はいつでも可能(取り決めた時から時効が発生)
※2.婚姻費用は、別居している時に問題となる。たとえば無収入の妻が勝手に家を出ていった場合にも、夫は請求に応じて婚姻費用を負担しなければならない。
お金の問題は、きちんと文書で取り決めた方が有利
男性とくらべて経済的弱者である女性側の立場からデータを見てみましょう。離婚する時にもらう金銭を一時金(おもに慰謝料と財産分与)、定期金(おもに養育費)に分けると、一時金の平均は400万円程度、定期金の月額平均は7万円程度となるようです。「そんなにもらえるのか」と思われるかもしれませんが、これはもらっている人の平均金額ですから、実際に一時金も定期金ももらっていない人の割合が大事です。離婚時に支払いの取決めをしていれば、80%近い人が一時金や定期金のかたちでお金を受け取っています。逆に、支払いの取決めをせず離婚してしまった人の場合、90%もの人が一時金・定期金ともに受け取っていません。
金額面でも、やはり取決めをしないで離婚した人は圧倒的に不利です。下のグラフをご覧下さい。養育費について「取決めあり・文書あり」の人がもらっている金額を100として、各条件ごの割合を示しています。ちゃんと文書付きで取決めした人は、一時金も定期金もたくさんもらっているのが理解できることでしょう。

このように、離婚したいという一心で慰謝料も養育費も決めずに終わってしまった人は、とても金銭面で不利になります。離婚後に請求が認められる期間(時効)は、慰謝料なら3年間、財産分与なら2年間、養育費については離婚時に取り決めを行っていた場合は基本的に5年となり、取り決めを行っていなかった場合は、後からでも今後の分の養育費に関する取り決めを行うことができます。「どうせ今さら請求しても相手は払ってくれないから」とあきらめる前に、何らかの行動を起こしてみる価値はあると思います。
もちろん、一番大事なのは「支払いについて取決めをしてから離婚する」ということです。公正証書のように強制力のある文書として合意内容を残しておくよう、心がけておきましょう。