養育費の時効と時効までに未払いの養育費を強制執行で請求する方法とは

慰謝料や財産分与など離婚の前に知りたい情報を解説。

養育費には時効がある?未払いの養育費を強制執行で請求する方法


養育費は離婚をしたひとり親が子供を養育していくために必要なお金です。

離婚してひとり親になった世帯の家計はとても裕福とはいえない世帯が多く、月に数万円の養育費があるだけで大きな助けになります。

逆に言えば、養育費が払われなければ、生活に困る家庭もあるということです。

そのため、支払われるはずの養育費はなんとしても払ってもらいたいと思うのは何も変な話ではありません。

では、払ってもらえない養育費を払ってもらうにはどうしたらいいのか?

また、いざ養育費を払ってもらうために手続きを取ろうとしたとき、養育費の権利が消滅してしまっていて養育費を払ってもらえなかったという事態を防ぐためにも、養育費の時効と強制執行について知っておく必要があります。

引用


未払いの養育費の時効とは


養育費は金銭債権の一種であり、時効が存在します。

そして、一度時効が成立してしまった養育費に関しては、法的な手段を用いて請求することができなくなります。
支払者に払ってくれるよう求めること自体はできますが、裁判所の仲介を求めることはできません。
そのため、いくら請求しても、そこに強制力はなくなってしまいます。

時効が成立するまで支払わずに放置した相手が、強制力のない支払請求に素直に応じてくれるとは考えづらいでしょう。

養育費は、毎月(あるいは数ヶ月ごと)に、定額を支払う方法で定められるのが一般的です。
支払の発生毎に、それぞれの月の支払い分について時効が発生していくことになります。
一般的に養育費の支払時効は5年ですが、例外が存在するため、個々のケースを見てみましょう。


これから発生する養育費

現時点から順次発生していく養育費は、その発生時点から個々に5年の時効を持ちます。
これは、協議、調停、裁判などの決定方法を問いません。


すでに弁済期(支払日)が訪れている養育費

すでに支払期日が過ぎている養育費について、支払を求める意思表示をすると、時効が中断します。

さらに、いずれかの手続きで支払期日がすでに訪れている養育費の支払いについて取り決めを行うと、時効が再度設定され、また新たにカウントを開始することになります。

このとき養育費の支払について取り決める手続きにより、再度設定される時効の長さが異なります。

  • 協議による合意、公正証書…5年
  • 調停、裁判…10年

なお、調停、裁判により時効が10年に再設定されるのは、弁済期(支払日)が訪れている養育費のみです。

これから発生する養育費については、変わらず5年で設定されます。


養育費について取り決めていなかった場合

離婚時に養育費について特に取り決めていなかった場合、その時点では養育費の権利が発生していなかったと判断され、養育費の時効はまだ発生していません。

しかし、離婚後に養育費の取り決めを行った場合は、その時点から時効が発生します。


この場合、過去の養育費を遡って請求すること自体はできるのですが、ほとんどの場合は請求を行った時点以降の養育費しか認められません。


養育費の時効を中断する方法とは


原則として、養育費の時効が一度成立すれば、その後に未払いの養育費を請求しても回収することができません。

そのため、時効が成立する前に養育費を回収しなくてはなりませんが、時効が間近に迫っていて回収が間に合わないというようなとき、時効を一時的に中断させて先延ばしする方法があります。

それが「催告」です。
催告とは「養育費を支払ってください」と相手に伝える請求行為であり、内容証明などで通知するのが一般的です。
この催告を行うと、その時点から6ヶ月間、時効が中断されます。
この6ヶ月間の間に、訴訟を起こすなどの準備をすることができます。

また、一度裁判が始まると、その間も時効は中断されます。
なので、催告を行って5ヶ月目でようやく裁判が始まった場合、そのあと1ヶ月を過ぎても、裁判の間は時効中断が続く、というわけです。


時効が完成したら養育費の請求はできないのか?

時効が一度成立してしまったら、その後に未払いの養育費の請求はできません。

ですが、時効が完成していなければ、時効を過ぎたあとも請求が可能です。

時効はただ5年(もしくは10年)を過ぎたら自動的に成立するものではないのです。
相手が「時効を過ぎましたのでもう支払いません」と援用(意思表示)しない限り完成されません。

なので、相手が援用をしてこない限りは、請求が可能なのです。


養育費の請求手続き


離婚後に養育費の支払が滞った場合、相手に請求する手続きは大きく3種類あります。

  1. 1.内容証明などを使って支払を催告する
  2. 2.裁判所から支払い請求の督促状を出してもらう(履行勧告)
  3. 3.訴訟を起こす(強制執行)

1.養育費の時効を中断する方法

訴訟などを起こさず穏便に支払を求めたいときは、内容証明を送付して支払をうながう方法があります。

内容証明郵便とは、「いつ、誰が誰に、どんな内容の文書を送ったか」を公的に証明できる郵便のことです。
この内容証明自体に法的強制力はなく、相手は無視することも可能ですが、法的措置の意思表示にもなるため、この時点で支払に応じる人もいます。


2.裁判所から支払い請求の督促状を出してもらう(履行勧告)

履行勧告は、家庭裁判所における調停や審判で定められた養育費を支払わない人に対して、裁判所が相手に支払を促してくれるものです。

ただし、この手続きは家庭裁判所の調停・審判・訴訟によって養育費を定めた場合にのみ利用可能なものなので、協議離婚や公正証書に定めただけではこの方法は使えません。


3.訴訟を起こす(強制執行)

内容証明などで促しても養育費を支払ってもらえないようなときには、最終手段として裁判所に申し立てて相手の財産を差し押さえてもらうという手があります。

この手続きは、公正証書などの公的文書(債務名義)をもっていなければ請求することができません。

次項では、この債務名義をはじめ、強制執行で未払いの養育費を回収する方法について解説していきます。



未払いの養育費を強制執行で回収する


離婚後に養育費の支払いが止まり、払われるべき養育費が払われなくなった場合、強制執行で未払い分の養育費を回収することができます。

強制執行を使うことで、養育費の支払い義務者の財産から未払い分の養育費を回収します。


強制執行で差押の対象となる財産

  • ・銀行の預金口座に預けている貯金
  • ・会社から支払われる給料
  • ・会社を退職した時に払われる退職金
  • ・有価証券や不動産を売った(競売にかけた)売上金
  • ・車や貴金属などを売った(競売にかけた)売上金

これらの財産から未払いの養育費を回収することができますが、養育費の強制執行では、債務者の給料を差し押さえる方法がよく使われます。


債務名義がなければ強制執行を請求できない

強制執行を請求するためには、債権名義があることが条件になります。
債権名義とは、債権(何かをしてもらう権利)が存在することを証明する公的な文書のことです。

債務名義に当たるもの

公正証書・調停調書・審判書・裁判の確定判決など

債務名義に当たらないもの

離婚協議書・覚書・合意書・口頭での約束


多くの人は協議離婚であることが多く、取り決めを文書に起こしても、離婚協議書や覚書で済ませていることが大半です。

そのようなときは、強制執行を利用するために、まず債務名義を取得するという手があります。

債務名義の取得には養育費についての調停を家庭裁判所に起こすのが一般的でしょう。

公正証書をすでに作成している方で注意しておきたいのは、「強制執行認諾」が付されているかどうかです。
これは相手がいざというときに強制執行を受けることに合意しているという証で、強制執行にはこの認諾が必要になります。

また、実際に強制執行を請求するときには、これに加えて「執行文」を作成してもらう必要があります。

債務名義によって、どんな条件が必要で要らないのかが異なってきます。
「自分が持っている文書は強制執行に使えるのか」とわからないようなときには、弁護士など専門家に問い合わせてみることをオススメします。


給料の差押で必要な手続き

給料を差押ようとした場合、まずは裁判所に民事執行手続きの申立を行います。

この申立を行う際に必要な書類には、差押命令申立書や債務名義などが必要になるため、あらかじめ自分で準備をしておくか、弁護士に確認を取り必要書類を準備を手伝ってもらいましょう。

裁判所に必要書類を提出して、裁判所から給料の差押命令が出れば、未払いの養育費を回収することが出来ます。

ただし、給料を差押ることが出来たとして、給料の全てを未払いの養育費として取り立てるわけではなく、給料の差押可能範囲が設けられているので、何度かに渡り養育費の回収を行うことになります。



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